中3化学_食塩水・硫酸銅水溶液の電気分解(応用問題)
※塩酸や塩化銅水溶液の電気分解が既習であるものとする。
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例題1 いろいろな電気分解
例題1
(1) 塩酸を電気分解したとき、陽極、陰極で発生する物質はなにか
(2) 塩化銅水溶液を電気分解したとき、陽極、陰極で発生する物質はなにか
(3) 水を電気分解したとき、陽極、陰極で発生する物質はなにか
※電気を通しやすくするため水酸化ナトリウム水溶液を加えている
(4) 食塩水を電気分解したとき、陽極、陰極で発生する物質はなにか
<解説>
(9) その他の電気分解
水溶液の電気分解に関わって来ないイオンがある場合は、
水の電気分解と同じ物質が生じると考える
陽極 酸素が発生する
陰極 水素が発生する
④食塩水
陽極 塩素が発生する
陰極 水素が発生する (は関わってこない)
③硫酸銅水溶液
陽極 酸素が発生する (は関わってこない)
陰極 銅が析出する
※ 水溶液の電気分解では、などのイオンは電気分解に関わってこず、そのようなイオンが集まる極では、水の電気分解と同じ物質が生じる。(詳しくは高校化学で学ぶ。)
(1) 塩酸
陽極に が集まり、塩素が発生する
陰極に が集まり、水素が発生する
(2) 塩化銅水溶液
陽極に が集まり、塩素が発生する
陰極に が集まり、銅が析出する
(3) 水の電気分解
陽極 酸素が発生する
陰極 水素が発生する。
(4)食塩水
①陽極
→ が集まる
→塩素が発生する
②陰極
→ が集まる
→ は電気分解に関わってこない
→水の電気分解の陰極と同じと考える
→水素が発生する
(5)硫酸銅水溶液
①陽極
→ が集まる
→ は電気分解に関わってこない。
→水の電気分解の陽極と同じと考える
→酸素が発生する
②陰極
→ が集まる
→銅が析出する
例題2 食塩水の電気分解
例題2
実験1
図のようにH字試験管を用いて、うすい塩酸に電流を流したところ、陽極、陰極両方から気体が生じた。
(1) 図で電流が流れる向き、電子が流れる向きをそれぞれ選べ
(2) 陽極、陰極で生じる気体をそれぞれ化学式で答えよ。
(3) この実験について述べた文中の[ ] のうち正しい語句を選べ
塩酸の濃度は電流を流し続けると[濃くなる・薄くなる]ため、電流はだんだん[流れにくくなる・流れやすくなる]。
実験2
うすい塩酸を食塩水に変えてに電流を流したところ、陽極、陰極でそれぞれ気体が生じた。
(4) 食塩水中の食塩の電離の様子を式で表わせ。
(5) 陽極、陰極で生じた気体の化学式をそれぞれ答えよ
<解説>
実験1
(1)
電流と電子は逆向きに流れることを覚えよう。
電流はプラスからマイナスに流れる
電子はマイナスからプラスに流れる
よって、電流:ア 電子:イ
(2)
塩酸の電気分解では
陰極→水素イオンが集まり、これが水素分子となる
陽極→塩化物イオンが集まり、これが塩素分子となる
(3)
水溶液中の水素イオンと塩化物イオンは徐々に減少する。
よって、塩酸の濃度は電流を流し続けると[薄くなる]。
また、水溶液中のイオンの数が減少するため、
電流はだんだん[流れにくくなる]。
実験2
(4)
食塩=塩化ナトリウムの化学式は
水に溶かすと、以下のように電離する
(5)
陽極:電離して生じた塩化物イオンが陽極付近に移動する。塩酸の電気分解でも塩化物イオンが陽極付近に移動している。よって、食塩水の陽極と、塩酸の陽極で同じ気体が発生する。よって、陽極では塩素が生じる。
陰極:水溶液中のナトリウムイオンが陰極付近に移動するが、ナトリウムイオンは電気分解に関わってこない。このようなときは、水の電気分解と同じ気体が生じる。水の電気分解では、陰極で水素が生じるため、食塩水の電気分解でも水素が生じる。
例題3 食塩水の電気分解とイオン交換膜
例題3
図のように、電気分解装置の陽極と陽極を陽イオン交換膜と呼ばれる膜で仕切り、陽極側に飽和食塩水、陰極側にうすい水酸化ナトリウム水溶液を加え、電流を流した。陽イオン交換膜は陽イオンのみを通し、陰イオンを通さない。また、この膜で仕切ることで、陽極側と陰極側の溶液は混ざることがない。
(1)陽極と陰極で生じる気体を答えよ。
(2)陽極側から陰極側に移動するイオンを答えよ。
(3)陰極付近で増加するイオンを答えよ。
(4)陰極側の水酸化ナトリウム水溶液の濃度は、電流を流すことで、どのように変化するか説明せよ。
<解説>
①陽極側
NaClが電離し、ナトリウムイオンと、塩化物イオンが生じる。
塩化物イオンは電子を受け取り、塩素が生じる。
一方、ナトリウムイオンは膜を通って陰極側に移動する。
②陰極側
よって。陰極からは、水素が生じる。
また、陰極側の水酸化物イオンの数は増加し※、
陽極側からナトリウムイオンが移動してくるので、
陰極側の水酸化ナトリウム水溶液の濃度は濃くなっていく。
※
が電子を受け取り、が生じる。
は陽イオン交換膜を通れないので、
陰極側の水酸化物イオンの数は増加する
例題4 硫酸銅水溶液の電気分解
例題4
実験1 図のような装置を用いて塩化銅水溶液を電気分解した
① 陰極、陽極で生じる物質はそれぞれなにか
② この実験でおきた変化を化学反応式で表わせ
③ この実験について述べた文の[ ]のうち正しい語句を選べ
電流を大きくすると、気体の発生のようすは[激しくなり/変化せず]、
陽極で発生する気体の総量は[多くなる・少なくなる・変わらない]。
実験2 同じ装置を用いて、電極を炭素棒から銅板に変えて、塩化銅水溶液の電気分解を行った。
④ 陽極ではどのような変化がおきるか説明せよ。
⑤ 陽極、陰極で生じる物質をそれぞれ答えよ。
⑥ 十分長い時間電流を通じると、溶液内は何という物質の水溶液に変化しているか
<解説>
実験1
①
陰極:銅イオンが移動し、電子を2個受け取って銅が電極表面に析出する。
陽極:塩化物イオンが移動し、電子を失って塩素が生じる。
②
③
気体の発生のようすは[激しくなる]。
発生する気体の総量は、塩化銅の量によって決まるため、[変化しない]。
実験2
④
陽極を白金、金、炭素棒以外の金属にした場合、
水溶液中の陰イオンは反応せず、
陽極の金属が溶ける(電子を失ってイオンになる)。
よって、銅板が溶ける。
⑤
陽極: 硫酸イオンが移動するが、硫酸イオンは電気分解に関わってこない。このようなときは、水の電気分解と同じ気体が生じる。水の電気分解では、陽極で酸素が生じるため、硫酸銅水溶液の電気分解でも酸素が生じる。
陰極: 電離して生じた銅が陰極付近に移動する。塩化銅の電気分解でも銅イオンが陰極付近に移動している。よって、塩化銅の陰極と、硫酸銅の陰極で同じ物質が発生する。よって、陰極では銅が生じる。
⑥
電流を流すと、溶液中の硫酸イオンと、水素イオン(水の電離で生じる)が増加していく。よって、硫酸水溶液になる。
解答
例題1
(1) 陽極:塩素 陰極:水素
(2) 陽極:塩素 陰極:銅
(3) 陽極:酸素 陰極:水素
(4) 陽極:塩素 陰極:水素
(5) 陽極:酸素 陰極:銅
例題2
(1) 電流:ア 電子:イ
(2) 陽極:塩素 陰極:水素
(3) 薄くなる/流れにくくなる
(4)
(5) 陽極 , 陰極
例題3
(1) 陽極:塩素 陰極:水素
(2) ナトリウムイオン
(3) 水酸化物イオン
(4) 濃くなっていく
例題4
① 陽極:塩素 陰極:銅
②
③ 激しくなる/変化しない
④ 陽極:酸素 陰極:銅
⑤ 銅が電子を失って銅イオンになるため、銅板が溶ける
⑥ 硫酸水溶液